服薬指導

新人1年目。服薬指導でまさかのトラブルに。

私は、大学を卒業して調剤薬局へ就職しました。

 

当時はまだ薬学部は4年制で現在の6年制卒薬剤師のように長期間の実習を行っていなかったので、大学生活と社会人生活との違いに戸惑いながら必死に仕事を覚えていました。

 

ようやく、調剤薬局という職場環境にも慣れてきて調剤ができるようになったので、次は服薬指導に挑戦していこうということで、私も意欲的に薬について勉強していました。

 

当時の未熟な私には、自分の知っている薬についての知識を提供するので必死で、患者さんが何を求めているのかまでは、考えるに至りませんでした。

 

薬の情報を伝え、患者さんの症状を聞いて、いつも誰にでも同じように服薬指導をしていました。

 

患者さんとの服薬指導トラブル

 

ある日、調剤薬局がとても込み合っていて、多くの患者さんを待合室でお待たせしているという状況の中、私が50代の男性に服薬指導を行った時のことでした。

 

私が、いつものように「今日はどうされましたか」と服薬指導を始めると、「もう、説明はいらないし、質問には答える必要はないから、早く薬をくれ」と言われ、戸惑いながら「でも…」とそれでもまだ服薬指導をしようと私が話し始めると、患者さんは、怒りを爆発させてしまい「お変わりはないですか?薬はちゃんと飲めていますか?なんて言葉は聞き飽きた。」

 

「症状が変わったから、薬を変えて欲しいと言っても、おまえたち薬剤師は“医師の指示がないとできません”、困った症状があると言っても“医師に相談してください”というだけじゃないか」

 

「薬剤師が質問しても、患者の訴えに対して何もできないじゃないか」

 

「質問しても何もできないのなら、質問なんてするな。ただ聞いて薬歴に書いておくだけなら、指導料などとるな」

 

私は、呆然としてしまい、それを見ていた先輩薬剤師が急いで駆け付けて「申し訳ありませんでした」とただ、ただ謝罪をし、患者さんに薬を渡し何とかその場を切り抜けました。

 

私は、いつものように仕事をしていただけなのに、何も悪いことをしていないのに、患者さんの罵声を浴びせられ、すごく不愉快な気持ちでいっぱいでした。

 

先輩薬剤師には、「待ち時間が長くてイライラしていたのかもしれないから気にしないでいいよ」とフォローしてもらいましたが、何か腑に落ちない気持ちでいっぱいでした。

 

患者さんの為になっていないのでは?服薬指導に疑問を抱えながら

 

冷静になって考えてみると服薬指導と言っても、患者さんのためになる服薬指導ができていたのだろうか。と今までの自分の仕事ぶりを振り返りました。

 

薬歴を書くために必要な情報を患者さんから聞き取って、薬の説明の紙を渡して、「お変わりはありませんか?」「薬はちゃんと飲めていますか?」とお決まりの質問をして終了。

 

患者さんにしてみれば、毎回同じことを聞かれて、聞いてもいないことを勝手に話されて、本当に相談したいことがあっても相談できるほど信頼していない。

 

当時の私はそんな薬剤師だったのかもしれません。

 

そんな、服薬指導を行って、私は一人前の薬剤師として仕事をしているつもりだったのです。

 

そんな、形式だけの服薬指導に日頃から患者さんは不満を感じ、毎回毎回小さな不満を募らせて、それがある時、爆発したのだとわかりました。

 

私の勤務していた調剤薬局では、どの薬剤師も同じような服薬指導を行っていて、私も先輩たちの服薬指導を真似て同じようにしていました。

 

だから、その服薬指導をしていれば、問題ないと考えてしまっていたのでした。

 

そんな私たち薬剤師の姿に患者さんは日々不満を抱えていたのだと思います。

 

患者さんに必要とされない薬剤師なんて!

 

患者さんのために行っていると思い込んでいた服薬指導は、実は患者さんにとっては、全く望んではいないことだったのかもしれません。

 

こんな患者さんから必要とされない薬剤師を続けていくのは、いやだと思いました。

 

私が薬学部を卒業した時代に大学で学んだことは、どちらかというと研究に繋がる基礎知識が多く、現場で使えるような実践的な知識は、ほとんどありませんでした。

 

なので、ほとんどの薬剤師は就職後、先輩薬剤師の真似をして患者さんとのコミュニケーションを学び、服薬指導を行っていたのでした。

 

現在でも、多くの調剤薬局で、薬歴未記入が発覚するなど、薬剤師の不適切、不十分な対応が見られています。

 

これから、薬剤師が地域社会から必要とされる人材となるには、一人一人の薬剤師の努力と意識改革が必要のように思われます。

 

悩んだ末に病院薬剤師として経験をつむことに

 

当時、健康な若者であった私にとって、調剤薬局は実生活でもあまりお世話になったことがない所で、もちろん素敵な薬剤師さんになんて出会ったことがありませんでした。

 

目標となる薬剤師像が全く見えず、患者さんが求めている薬剤師像も分からず、このままの役立たずの薬剤師では仕事を続ける意味がないと考えるようになっていました。

 

悩んだ結果、私が選択したのは転職でした。

 

病院薬剤師へ転職しようと思い、転職先の病院を探しました。

 

病院薬剤師なら、患者さんの病態や検査結果などの情報を知ることができ、医師がどのような意図で治療を行っているかもわかるので、より深い知識を吸収することができると思ったからです。

 

規模の大きい総合病院や大学病院などは、新卒でないと採用が難しいので、規模の小さめな200床くらいの病院を探して転職しました。

 

病院に転職したばかりの頃は、わからないことが多く、看護師に怒られ、医師からの質問にしどろもどろになり、苦労することばかりでした。

 

しかし、そこには、患者さんから必要とされる薬剤師になるために新たな一歩を踏み出した自分がいました。もう、あんな思いはしたくない、患者さんの心からのありがとうの言葉が聞ける薬剤師になりたい、その思いに支えられて仕事を頑張っています。

 

新米薬剤師がやりがちな〜服薬指導トラブル〜